Shop Close Notice


上野店閉店のお知らせ

いつもMODECO松坂屋上野店をご愛嬌いただきありがとうございます。
この度誠に勝手ながらMODECO松坂屋上野店は平成27年12月22日をもちまして、お休みをさせて頂く事になりました。

Open以来のご愛顧、本当にありがとうございました。

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消防服の再利用を目指したコレクションは2012年にMODECO発祥の地名古屋市の消防局からのオファーを頂いてからスタートしました。

「超高機能の防火服に新しい可能性を見出して欲しい・・」 そんな思いからスタートし、都市が生み出す産業廃棄物 消防服の廃棄低減を目指したコレクションです。

現在名古屋市の他にも川崎市、豊田市など新たな自治体がこのプログラムに参加し始めた事で、よりユニークな発展が期待されます。

消防服のユニーク性は消防士1人1人が街を守り抜いてきた軌跡が1着1着に違いがあり、同じデザインは1つとして作れないところ。すなわち全て1点モノとなり、また年度に応じて廃棄量も異なる為生産量も限りがある非常に限定性が高いコレクションとなります。

また消防服そのもののデザインは都市毎に自由。都市毎にデザインが異なり、より多くの都市が参加すればする程デザインが更に多様的に拡がっていきます。

世界で初めて官民一体となって進めた環境配慮を目指したデザインプログラムはMODECOならではの画期的なコレクションに成長しつつあります。



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都市によって廃棄量は異なりますが、年度によって「燃えない」為に焼却が出来ない消防服の多くは破砕して地中へ埋め立て処分しています。消防服の素材はアラミド繊維と呼ばれる軽量且つ丈夫な機能を持ちますが化学繊維の為、自然に還る事なく残留します。残留は体内に異物が混入する事に等しい為、これらを防止すべく、再利用を行っております。

現在展開をしている廃材の削減を目指したアップサイクル製品は、過剰生産を禁じています。廃材の削減を目指す一方で、「廃材から生まれた製品による廃材」の発生を防ぐべく、廃材の削減量に目標を定め、その数値に準拠しながら製造を行っています。年間廃棄量に上限がある消防服などは、年間削減量を満たす生産を行った場合、その年における生産・販売は終了となります。その為、対象のデザインが売り切れたとしても追加生産が掛かる事は御座いません。

1つ1つの廃材毎の問題解決と啓発に向けて、日夜デザインと製造に勤しんでおりますが、私達の手によって製品を完成させた時点では解決とは呼べません。私達の役目はゴミとなってしまう運命にある無価値の存在に確実な存在意義を与えるところまでであり、実際に皆様が手にした瞬間、初めて「モノ」としての意味が生まれるのです。そしてそれは同時に廃棄による環境負荷を食い止める一助にも繋がります。








Tommy & Fred




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おかげさまでFire fighter collectionは例年大変人気を頂いております。
今期からは新たな都市の参加もあり、ファンの皆様、MODECO、行政が一体となって
取り組めている本コレクションは本当に素晴らしいコレクションに成長し続けている事に
感動を覚えます。

さて、2016年度の本コレクションはTommyとFred、二人の子からスタートしました。
兼ねてからご要望が多かったバックパックへの挑戦をするにあたって、どのようなデザインが
良いか昨年夏頃から悶々と考えておりました。

本コレクションは「ストレートに、ダイレクトに描き、インパクトを届ける」が
基本的なデザインの主旨となります。消防服1つ1つの軌跡を余計な脚色を省き、描く事こそ
が最もあるべき姿と考えます。

そしてそのデザインの根幹は「ジャケット」にあります。
自治体によって異なりますが、リフレクター(反射板)に始まり、トランシーバーを収納する
三叉の特殊ポケット、ジャケット本体の大振りな立体ポケット、都市のサインなどなど、これ
らを適正に活かしていく事が基本的なポイントとなります。

TommyとFredはこのジャケットを最も贅沢に描いたモデルと言えます。
消防服の中で最も面積が大きいジャケットの背面を丸々1枚使用し、ジャケットの立体ポケット
もそのまま活かし、まるで消防服を身にまとっているかのような、そんな気分になれる
ダイナミクスにあふれたデザインに仕上がりました。

今期はFire fighter collectionに絞った展開からスタートするにあたって、1つのマスターピー
スを描く事が目的でしたが、何とかベースになる形が出来たと思っています。
私にとってもとても愛着のある子達です。

しかしながらこのモデルはジャケットの背面の状態が少しでも悪いと作れませんし、
貴重な部位を贅沢に使用するので、限られた生産となる本コレクションの中でも
取り分け貴重なモデルとなります。


おかげさまで既に売り切れてしまったモデルもあり、今期分は残すところ僅かになりました。
追加生産は・・多分難しいので、もし迷われている方はお早めのご検討をお薦めします。

TommyとFredは、消防服をアップサイクルしたバックパックとしてこれ以上ないデザイ
ンの1つが出来た事に個人的に満足しているモデルです。



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ブランドの展開の仕方を変えたわけ




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お客様より「もうレディースはやらないの?」とか「このモデルはもう作らないの?」
など日々、ご希望を頂きます。中々展開が出来なくて申し訳ない限りです。

でもちゃんと理由があるんですよ。
この際なので、ブランドの展開の仕方を変えたわけを記しておこうと思います。

このブランドのミッションをざっくり言えば、社会問題と向き合い、より良い社会の一路を
見出す事です。一言で言えば循環型社会なんて呼ばれるものです。
それを目指す上ではあらゆる社会問題に向きあわなければなりません。
その社会問題の1つが環境問題であり、環境問題
の1つが無駄な資源搾取と環境負荷を掛けている産業廃棄物の問題です。
MODECOはここからスタートしたわけです。

それらの啓発と解決を目指してスタートしたのがMODECOだったのですが
いわゆる一般市場ではその思いよりも消費欲求を満たすことを優先せざるを得ない状況でした。

例えば今のファッション業界。
3月から8月まで春夏(S/S)、9月から2月まで秋冬(A/W)の2シーズン制。

S/Sは3月から6月までプロパー(定価)、7、8月はクリアランス(セール)
A/Wは9月から12月までプロパー(定価)、1、2月はクリアランス(セール)
アウトレットは当たり前。

早いサイクルで物を作り、またすぐにセール。
次のシーズンも繰り返し。

端的に言えば・・

大量に作り、大量に売り、そしてモノとして余る。
セールやアウトレットで売り切れなかったら、捨てる。
モノとして余るという事はモノの原材料は更に余る。

モノの価値がどんどん低迷し、資源をどんどん搾取し、余ったらどんどん捨てる。

ある日、ふと思いました。


これをやりたかったんだっけ?


むしろ逆です。
個々の廃材の可能性はそこまでたくさんあるわけではありません。
だからこそ1つのデザインが末永く愛されるようデザインしなければまた捨てられてしまうで
しょう。早い市場のサイクルに参加すれば、それだけ寿命も短くなってしまいます。

余ってしまって捨ててしまうもの、使用済となって捨ててしまうもの。
廃材は主に2つの種類がありますが、せっかく削減を目指したのに、売れなかったから捨てる
というのは本末転倒も甚だしい。

つまり、これを止める為です。
そしてレディース市場はこのサイクルが顕著で、消費も激しい分、要望も資源ロスも激しい。
一旦これを整理整頓しなければ、と思ったからなのです。

今期は消防服のコレクションを集中的な展開をしているのも、この理由が関わっています。
廃棄消防服の場合、各自治体が廃棄する消防服が原材料となります。
この廃材量は毎年どれだけ廃棄されるか分かりません。
つまり毎年どれだけ展開出来るか、全く以て不透明なコレクションです。

原則自治体との連携が広がらない限り、展開数の限りがあるコレクションですが
おかげさまで毎年名古屋市消防局から廃棄される消防服は概ね償却出来ておりました。

なので、今期はまず定量的な削減が見込みやすい消防服の確実な有効活用を目指して
進めていき、その他の製品は一旦休止して、「消費需要による販売目標」ではなく
「廃材の削減量」のみに焦点を当てて展開しようと思いました。

こうすれば無駄に作る事なく、削減も確実に出来ますからね。

一方で楽しみにして頂いているお客様には申し訳ないと思っております。
しかし、ブランドを見つめ直し、MODECOがやるべき事を考えた結果、
廃材の削減を第一に考えた無駄のない展開をしようと思ったわけです。

この上で消防服の廃材は廃材自体が「年間数量限定」なので、削減目標を打ち立てやすかった
ので、ここからリスタートを切ろうと思ったわけです。

需要にもお応え出来るように1つずつ着実に進めていきますので
ご希望のラインの登場まで、今暫くお待ち願えれば幸いで御座います。

Chapter 1: Cambodia Trip









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2016年6月末、先月放送されたNHK WORLD「RISING」のドキュメンタリー撮影も兼ねて、兼ねてから赴きたかったカンボジアへ渡航しました。

事の発端は2年程前に遡ります。私達が普段着ている衣類は不要となると廃棄するか、若しくはリサイクルショップへ持ち込むか、主にこの二択だと思いますが、いずれであれ不要となった衣類を業界用語で「故繊維」と呼びます。日本ではこの故繊維がどのような取り扱いが行われているか、この実態を故繊維業界の企業と繋がり、当時からリサーチしていました。
※詳細はHappenings REPORT 「衣服の末路」をご覧下さい。
https://www.modeco-brand.com/happenings/cloth-fate-of-clothes/




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大量の不要となった衣類、「故繊維」達が眠る倉庫。




大量消費、廃棄社会となった事で故繊維そのものの量が増大した影響で私達個人の衣類の廃棄量は増加傾向になります。その故繊維は国内で二次利用がなされない場合、国外へ輸出されています。その輸出先の代表格がカンボジアです。
今回その故繊維が現地でどのような取り扱いを成されているのか、この実態を調査しにいく事と同じ故繊維の中でも特殊な故繊維「各国の軍服の古着」がどうやらカンボジアへ集っている情報をキャッチし、これらの実態を確認し、MODECOとして何が出来るのか確認する事が目的でした。

到着して驚いた事は予想以上に活気にあふれ近代化に向けての発展が感じられる街や人達でした。

ご存知の方も多いと思いますが、近代史においてカンボジアは凄惨な歴史の背景があります。クメール文化など国としての歴史は非常に深い歴史を持ちますが、主にポルポト政権下における当時の施策により、国そのものがリセットされてしまった事で文化も人もゼロからやり直している状態にあり、勝手ながら少しネガティブな空気を予想していました。

ところがそんな思いとは裏腹に人も街も一生懸命。一方で垣間見える緩やかな家族との時間。そんな生活風景は個人的にはとても心地良いものでした。




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ドキュメンタリー制作チームとメコン川で。




到着早々、早速故繊維が集うタイとカンボジアの国境地点のポイペトカンボジア)〜アランヤプラテート(タイ)へ向かいました。実際はプノンペンに集まっているのですが、これらが一般向けに売買されている代表的なエリアがこのポイペト〜アランヤプラテートになります。

陸路でポイペトからアランヤプラテートへと国境を越え、実際の市場へ向かいます。




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国境付近。




その途中、各国から集まった故繊維を荷馬車で引く人達を見受けられました。1袋あたり100kgを優に超える故繊維が詰まった袋を何袋も積み上げリヤカーで運び込む姿はインフラがまだ行き届いていないここならではの光景と言えます。また陸路を歩く中でストリートチルドレンがお金をねだる光景もここならではと言えるでしょう。経済が今まさに発展途上しているカンボジアの様な国では、こうした光景も珍しくなくないのですが、経済が発展する事で得られる恩恵も多い一方で、豊かになる事で失われていく事もあり、カンボジアではその失われた何かが残っている事を感じる事も出来ます。どちらが良いのか、ベタですが考えさせられるものがあります。




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大量の故繊維が運び込まれる。




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リヤカーで大量の故繊維を運ぶ。




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故繊維を積み上げる。




アランヤプラテートの市場は巨大なアーケードとなっており、あらゆる古着が並んでいました。カンボジアから流れていきた故繊維。それらが詰まった袋から衣服を取り出し、家族で仕分け売る。これを生業としている人々が確かに存在しています。日々私達が着終えた服は確実に彼らの生活の一部となって循環していました。




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大量の故繊維を仕分けする。




しかし軍服だけは違います。カンボジアでは軍服古着のファッション的着用が暗に禁止されているのです。特に法や条例があるわけではないようですが、実際に着用した人の逮捕事例もあるようで軍服に対してとても敏感になっているようでした。




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ファッションとして流通されない軍服達。




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タイへ流通される軍服。




これが歴史的な背景から来る感情論なのか否かは現地の人間でも分からないらしいのですが少なくともカンボジアにとっては軍服古着そのものが不要=廃材であり、タイへ流通せざるを得ない事が理解出来ました。

カンボジアにおいて古着は1つの貴重な産業資源でそれらは確かに生業の1つです。しかしその中でも軍服古着は不要の存在でしかなく、これらの廃材を用いてカンボジアからカンボジアの人達と共に放つ新たなデザインは何か出来ないだろうか。願わくば軍服を拒絶するカンボジアだからこそ発信すべき平和なデザイン・・そんなモノがここカンボジアで描けたらと感じた日でした。Chapter 2に続く。







Chapter 2: Cambodia Trip









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Chapter 1でお伝えした通り、軍服の廃材はカンボジアにおいて完全に不要物である事が分かり、これらを何とかする為に早速動き出してみました。

カンボジアでは縫製産業が一定盛んになっているとは聞いていましたが、果たして良いパートナーが見つかるか・・そんな事を考えながらアランヤプラテートからプノンペンへ戻りました。

翌日、朝。何か解決策はないかな〜と考えていた矢先、現地のコーディネーターから

「MODECOだったら気に入ってくれる工場があるからそこへお連れしたい」

と言われて、促されるままにプノンペンのとあるエリアに移動します。一体どんなところですか?と聞くと、是非直接会って確認してみてくれとの事。期待を胸に一路工場のあるエリアまで・・。




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裏道を抜けて行くと。




到着すると、周りには性ビジネスの看板が立ち並び、こんなところに工場なんてあるのかなんて事を思いながら案内されるがままに裏路地を歩いていくと、三軒程軒を連ねる小さな家に到着しました。

中に入ると1人の女性が出迎えてくれました。彼女に案内され、中に入っていくとそこにはミシンが数台並ぶ小さな工場がありました。

「なんでわざわざこんなところで工場をやってるんだろう?」

そんな事を思いながら、ある事に気付きました。この工場、よくよく見てみると女性しかいません。

彼女が話し出しました。

「私は「Woman’s hopegroup」の代表のChannyです。私達はカンボジアで性ビジネスでしか生計を立てられない女性達を救う為に、工場を立ち上げブランドを作りカンボジアで運営しています」

ん?
性ビジネスでしか生計を立てられない???
どういう事???




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女性達の縫製職人達が働く工場の中。




彼女は続けます。

「カンボジアではまだまだ働き口が少なく、特に女性は安易に性ビジネスに手を染めてしまうケースが多い。私はそんなカンボジアの女性達の新たな雇用を生み出すと同時に、彼女達にとって誇りある仕事にする為に自社でブランドを作りました」

正直、めっちゃくちゃ驚きました。カンボジアでこんな人がいるなんて・・

今思えば凄く失礼な話ですが、勝手ながらに感じていた事として、いわゆる途上国には教育的インフラがなく、ましてやカンボジアはポルポト政権による虐殺によっていわゆる「大人」が少ない国。だから教育が整ってないし、ましてやデザインをするなんて概念もない・・。生きていく為に仕事をする事があっても、自分達の誇りを得る為に仕事をする意識を持つ事なんて、まだまだ先の事だろうと。しかし彼女はまっすぐな目で言いました。

カンボジア人がカンボジアの独自のブランドを立ち上げる。ここカンボジアから。

この意味、多くの方にはあまりピンと来ないかもしれません。しかしこれはとても凄い事だと思います。




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代表のChanny。素敵な笑顔が印象的だ。




途上国におけるビジネスの構図は「先進国に守られる」構図が目につきます。事実、ここカンボジアでもイタリア人がデザインを行い、カンボジア人が作るという様なブランドもあります。要は先進国の人間が途上国へ介入するケースがほとんどで、先進国側の人間が出来る事と途上国側の人間が出来る事を棲み分けて展開する事例が多く見受けられます。

これによって何が起きるのか。

「自立」が一向に起きないのです。誰かが作り上げた「価値」に依存し、守られてしまう事で自分達で「価値」を作り上げる事を全くしなくなります。もちろん技術は大きな価値ですしいわゆる技術だけでも価値は成立します。

しかし特にアパレル業界では原則その技術を活かすも殺すも「トータルデザイン」、つまり【最終製品】が重要、というのが私の持論です。

つまりブランドを立ち上げるという事は「自立した最終製品」を生み出そうという事。それをこのカンボジアで、若き女性が立ち上がり挑戦している事を聞いている内に正直胸が詰まる程に大きな感動を覚えました。

「彼女達と一緒にカンボジアの製品を作りたい!」

率直にそう思いました。こうした熱を帯びた人との製作はいつも新たな可能性に繋がりますが、今回は本当単純に彼女達と一緒に作りたいと素直に感じました。

一連の話を伺ったところで、今度はこちらの番。手にした軍服の廃材を元に、こちらの思いを伝えたところ快く受け入れてくれました。そして早速デザインについて、彼女達と協議が始まったのです。

Vol3へ続く






Chapter 3: Cambodia Trip









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Woman’s hope groupとの協議が始まりました。自分がカンボジアへ来た理由、何を目指しているのか、どんなモノを作りたいのか・・一生懸命、こちらの思いや意思を伝えました。

Channy(チャニー)も全てを理解し、協力してくれる事になりました。そんな中で、柱の陰からひっそりとこちらをチラチラ見ている女性がいました。

彼女の名前はChend(チェンダ)。彼女は今まで会った人の中でも一際目を輝かせた人でした。どうやら彼女はデザインにとても興味があるらしく、こちらで話している事が気になっていたみたいです。

「こっちにおいでよ」

そう言うと、彼女はニッコリと笑顔で会議に参加。Chendaも交えて皆で会議を進めていきました。





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黙々と作業をするChenda。




大体の協議を進めて、実際の制作は翌日からに。Channyは明日から自身のブランドを販売しに行商へ出かけるとの事だったので翌日からはChendaが引き継ぎ、制作を進めていく事になりました。

MODECOも昨年まではポップアップストア(催事)を月に何本も敢行していました。もちろんMODECOを多くの人に知って貰う為、そしてブランド自体の成長の為でした。そしてそこで得られた経験や出会いはかけがえのないものだったと思います。

彼女達も市場に打って出て、まさに挑んでいる大切な時。国は違えど、目指す事は同じです。

「上手くいくと良いね」

そう言うとChannyも「スタッフ達の為にも頑張ってくるわ!」と笑顔で答えその日は解散しました。Woman’s hope groupの工場を離れ、改めて考えていました。

彼女達と作るデザインはどんなものが良いのだろう。

当初の目的は軍服の廃材に新しい意味を見出す事でしたが、どうやら彼女達との出会いでそれ以上にもっと何か出来るような気がしてなりませんでした。そしてふと思いました。

もう少しきちんとカンボジアの文化や歴史を学ばなければ・・

付け焼き刃かもしれませんが、彼女達と制作する上で、彼女達の国の背景を知る事は礼儀だと感じました。これはMODECOの全てのデザインに言える事ですが、モノが飽和した現代社会において無駄なモノは作るべきではありません。資源の無駄に繋がりかねませんし、既に溢れかえっているからです。だから自分自身が作りたいから、という理由なんて言語道断。誤解を恐れずに言えばマーケットが求めているから、という理由も私にはあまり該当しません。

自身の制作欲求でもなく、また市場の消費欲求でもないのに作る理由なんてあるのか。一般的なビジネスではこれ以上の理由は存在しませんが、MODECOの場合は違います。

MODECOが作る理由は「後世に残しておきたいデザインか否か」この1点のみです。おこがましく聞こえるかもしれませんが、作る理由は本当にこれだけです。

この上でMODECOの製品は全て「今後必要なモノ」と感じたモノ以外は原則作っていません。

例えば数々の廃材達。彼らは放っておけば全て「無価値のゴミ」。その多くは私達の目の届かない場所で環境にダメージを与えながら、資源のロスにも繋がっています。

しかしもし彼らにとって「生まれてきた別の理由」が出来たとしたら?もしそれがあったら彼らは決して無駄にならない。それを想像する事こそ、人の創造力の素晴らしさではないでしょうか。


なので、彼女達と共に作る上でも、カンボジアという国をもう少し触れておく必要があると感じ、残りの時間はカンボジアを知る時間に費やしました。この時には既にシェムリアップに立ち寄っており、クメールの歴史が詰まったアンコール遺跡群には一通り触れていましたが、その他の場所で行っておかねばならない場所へ向かう事にしました。

1つは近代史に触れる為にキリングフィールドへ。





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そして現在のカンボジアの一端に触れる為にスモーキーマウンテンへ。





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過去から近代、そして今。この国がどのような歴史を辿り、彼らがこれから望む事は何か。そして共に出来る事は何か。

明日からはいよいよ制作。宿に戻り、机に向かってデザインを描き始めました。

Vol4へ続く





Chapter 4: Cambodia Trip









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翌日、再度Woman’s hope groupの元へ。今日からChannyは行商へ出掛けているので、代わりにChendaが対応してくれました。

Chendaにラフ画を元に早速型紙を作成し始めます。驚いたことに彼女の型紙の作成スピードは非常に早く、的確なものでした。

「これは独学で学んだの?」

こう聞くと彼女は答えました。

「2、3年はタイの職人の元で学んでいたけど、そこからは独学よ」

うーん、それにしても見事なスピードと精度・・

海外の連中、といっても無数にいるのであくまでMODECOとして関わった海外の人達に限りますが、彼らと会話したり、彼らの仕事の姿勢を見ていると日本との違いを感じる事が本当に良くあります。

彼らは【目的】を達成する事が最も重要だという事を理解しています。だから形なんかにこだわらないし、出来ない理由を探す事よりも出来る為にどうするかしか考えない。形式論から入りやすい日本との大きな違いです。

Chendaも多分に漏れず、形なんかに囚われません。定規なんかなくても厚紙のヘリを使えば直線は引ける、コンパスなんかなくてもマグカップを使えば円もアールも書ける、机なんかなくても地面が机になる・・物を作る時に大切なのは何よりも「作りたい、作り切るんだ」という強い想いだけ。それを本能で理解し、感情で動く彼らの姿は作り手として純粋そのもの。そして何より楽しんでいる。

日本の環境から見れば機材も器具もないこの場所は、恵まれた環境とは言い難いですし、何を作るにしてもそれを作る為のいわゆる条件が整っていない、と日本であれば多くの場合、そう判断されるでしょう。しかしそんな事はどうでも良い、と言わんばかりに作る事を楽しみ、技術を学び、出来ない事よりも出来る為にポジティブに悩み、機材や器具がなくても出来る事を一生懸命楽しみながら作るその姿は本当に見習うべきものがあると思います。

MODECOのアップサイクルも全く同じだったんですよね。

MODECOを立ち上げるより以前、廃材を触り始めた当初はあらゆる国内の工場や職人に散々断られてきました。だから自分で作れる事を実証し、それを職人に伝えて初めて一歩を踏めたもんです。その後一人の職人との出会いが劇的に変化をもたらしたわけで、当時務めていた営業職を終えた後、夜な夜な試行錯誤して共に作ってきた彼も実は外国人。彼もまた意欲的で、何よりいつでも作る事を楽しんでいた人で今なお尊敬する職人の一人です。

何であれ目的の為に出来る事を楽しみながら実践する、要は積極的な姿勢で臨む事と出来ない事を前提にし、更には挑戦をハナから拒絶する消極的な姿勢で臨むのとでは結果に差がつくのは当たり前。今のところ海外で出会う人達は皆ポジティブで、積極的な連中が多いので本当に
ご縁に感謝です。





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Chendaの隣に座って工程を見ながら、時に手伝いながら仕上げていく中でそんな事を思い返していました。彼女もまた挑戦者の一人です。だからこんな彼女達と一緒に何かこれからも挑戦出来たら良いな、と感じていました。今回の制作がその始まりになれば良いなと。

そんな事を考えている間にも作業は進行。無事にサンプルが出来上がりました。正直今回の渡航で何処まで進められるかまでは未知数だったので、ここまで進行出来た事が嬉しかったですし、何より初めて彼女達と作った作品が出来た事に喜びを感じたのを今でもはっきりと覚えています。





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Chendaは作業を終えた後にこう言いました。

「初めての事だらけで不安もあったけど楽しかったし、とても良い経験になったわ!」

屈託のない笑顔で答える彼女の言葉を聞き、私も本当に彼女達と一緒に作れて良かったと心の底から思いましたし、何より爛々と輝く眼差しはとても熱く、大きな刺激を受けました。

最後に彼女に聞きました。「今、一番やってみたい事は何?」

するとChendaは笑顔で答えます。
彼女の気持ちは常にこのグループに向いています。本当に真っ直ぐな人です。





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「日本に帰った後も必ず連絡するよ」

そう告げて仕上がったサンプルを手に、Woman’s hope groupを後にしました。

日本へ帰国後も彼女達とコミュニケーションを取り続けています。近い将来、彼女達と作り上げた作品がお披露目出来ると思います。お楽しみに・・!

Vol5へ続く





Chapter 5: Cambodia Trip









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あっという間の1週間でした。

初のカンボジア渡航は予想以上の経験が出来ました。そして個人としてもMODECOとしてもここカンボジアに大きな可能性を感じる事が出来ました。

仕事柄、海外とのコミュニケーションも間々ありますが、カンボジアは一際考えさせられる事も多く、今後挑戦したい事も数多く見当たりました。

歴史的な背景は国それぞれあり、また問題や課題も然り、それぞれ持ち合わせます。MODECOはそんな各所課題に真っ直ぐ向き合い、それらを視覚化し、刺激的なデザインを生み出しながらも、それらが子々孫々これからの時代の為に描いています。

ブランド設立時から向き合うアップサイクルは経済発展の裏側に潜む産業廃棄物の存在に可能性をもたらすアプローチで1つのアイデンティティとして作り続けていますが、どうやらカンボジアではそれとは違う新たな挑戦が出来そうな予感がしています。

その挑戦はWoman’s hope groupの様な現地の人達と共に歩みたいと思います。これからこの国から生まれてくるであろうカンボジアンカルチャーの創造・・きっとそれは刺激的な挑戦になるだろうと思います。それが結果としてこの国やこの国に住む人達の為になれば言う事ありません。

そんな想いを胸に現在進行形でWoman’s hope groupとコミュニケーションを取りながらそれぞれの思いを少しずつ形にすべく動いています。





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やっぱり新しい挑戦は楽しいなぁ〜〜
僅かながらの期間でしたが、ここ最近の旅の中でも充実した本当に素晴らしい旅でした。