Chapter 3: Cambodia Trip
Woman’s hope groupとの協議が始まりました。自分がカンボジアへ来た理由、何を目指しているのか、どんなモノを作りたいのか・・一生懸命、こちらの思いや意思を伝えました。
Channy(チャニー)も全てを理解し、協力してくれる事になりました。そんな中で、柱の陰からひっそりとこちらをチラチラ見ている女性がいました。
彼女の名前はChend(チェンダ)。彼女は今まで会った人の中でも一際目を輝かせた人でした。どうやら彼女はデザインにとても興味があるらしく、こちらで話している事が気になっていたみたいです。
「こっちにおいでよ」
そう言うと、彼女はニッコリと笑顔で会議に参加。Chendaも交えて皆で会議を進めていきました。
黙々と作業をするChenda。
大体の協議を進めて、実際の制作は翌日からに。Channyは明日から自身のブランドを販売しに行商へ出かけるとの事だったので翌日からはChendaが引き継ぎ、制作を進めていく事になりました。
MODECOも昨年まではポップアップストア(催事)を月に何本も敢行していました。もちろんMODECOを多くの人に知って貰う為、そしてブランド自体の成長の為でした。そしてそこで得られた経験や出会いはかけがえのないものだったと思います。
彼女達も市場に打って出て、まさに挑んでいる大切な時。国は違えど、目指す事は同じです。
「上手くいくと良いね」
そう言うとChannyも「スタッフ達の為にも頑張ってくるわ!」と笑顔で答えその日は解散しました。Woman’s hope groupの工場を離れ、改めて考えていました。
彼女達と作るデザインはどんなものが良いのだろう。
当初の目的は軍服の廃材に新しい意味を見出す事でしたが、どうやら彼女達との出会いでそれ以上にもっと何か出来るような気がしてなりませんでした。そしてふと思いました。
もう少しきちんとカンボジアの文化や歴史を学ばなければ・・
付け焼き刃かもしれませんが、彼女達と制作する上で、彼女達の国の背景を知る事は礼儀だと感じました。これはMODECOの全てのデザインに言える事ですが、モノが飽和した現代社会において無駄なモノは作るべきではありません。資源の無駄に繋がりかねませんし、既に溢れかえっているからです。だから自分自身が作りたいから、という理由なんて言語道断。誤解を恐れずに言えばマーケットが求めているから、という理由も私にはあまり該当しません。
自身の制作欲求でもなく、また市場の消費欲求でもないのに作る理由なんてあるのか。一般的なビジネスではこれ以上の理由は存在しませんが、MODECOの場合は違います。
MODECOが作る理由は「後世に残しておきたいデザインか否か」この1点のみです。おこがましく聞こえるかもしれませんが、作る理由は本当にこれだけです。
この上でMODECOの製品は全て「今後必要なモノ」と感じたモノ以外は原則作っていません。
例えば数々の廃材達。彼らは放っておけば全て「無価値のゴミ」。その多くは私達の目の届かない場所で環境にダメージを与えながら、資源のロスにも繋がっています。
しかしもし彼らにとって「生まれてきた別の理由」が出来たとしたら?もしそれがあったら彼らは決して無駄にならない。それを想像する事こそ、人の創造力の素晴らしさではないでしょうか。
なので、彼女達と共に作る上でも、カンボジアという国をもう少し触れておく必要があると感じ、残りの時間はカンボジアを知る時間に費やしました。この時には既にシェムリアップに立ち寄っており、クメールの歴史が詰まったアンコール遺跡群には一通り触れていましたが、その他の場所で行っておかねばならない場所へ向かう事にしました。
1つは近代史に触れる為にキリングフィールドへ。
そして現在のカンボジアの一端に触れる為にスモーキーマウンテンへ。
過去から近代、そして今。この国がどのような歴史を辿り、彼らがこれから望む事は何か。そして共に出来る事は何か。
明日からはいよいよ制作。宿に戻り、机に向かってデザインを描き始めました。
Vol4へ続く