Chapter 2: Cambodia Trip
Chapter 1でお伝えした通り、軍服の廃材はカンボジアにおいて完全に不要物である事が分かり、これらを何とかする為に早速動き出してみました。
カンボジアでは縫製産業が一定盛んになっているとは聞いていましたが、果たして良いパートナーが見つかるか・・そんな事を考えながらアランヤプラテートからプノンペンへ戻りました。
翌日、朝。何か解決策はないかな〜と考えていた矢先、現地のコーディネーターから
「MODECOだったら気に入ってくれる工場があるからそこへお連れしたい」
と言われて、促されるままにプノンペンのとあるエリアに移動します。一体どんなところですか?と聞くと、是非直接会って確認してみてくれとの事。期待を胸に一路工場のあるエリアまで・・。
裏道を抜けて行くと。
到着すると、周りには性ビジネスの看板が立ち並び、こんなところに工場なんてあるのかなんて事を思いながら案内されるがままに裏路地を歩いていくと、三軒程軒を連ねる小さな家に到着しました。
中に入ると1人の女性が出迎えてくれました。彼女に案内され、中に入っていくとそこにはミシンが数台並ぶ小さな工場がありました。
「なんでわざわざこんなところで工場をやってるんだろう?」
そんな事を思いながら、ある事に気付きました。この工場、よくよく見てみると女性しかいません。
彼女が話し出しました。
「私は「Woman’s hopegroup」の代表のChannyです。私達はカンボジアで性ビジネスでしか生計を立てられない女性達を救う為に、工場を立ち上げブランドを作りカンボジアで運営しています」
ん?
性ビジネスでしか生計を立てられない???
どういう事???
女性達の縫製職人達が働く工場の中。
彼女は続けます。
「カンボジアではまだまだ働き口が少なく、特に女性は安易に性ビジネスに手を染めてしまうケースが多い。私はそんなカンボジアの女性達の新たな雇用を生み出すと同時に、彼女達にとって誇りある仕事にする為に自社でブランドを作りました」
正直、めっちゃくちゃ驚きました。カンボジアでこんな人がいるなんて・・
今思えば凄く失礼な話ですが、勝手ながらに感じていた事として、いわゆる途上国には教育的インフラがなく、ましてやカンボジアはポルポト政権による虐殺によっていわゆる「大人」が少ない国。だから教育が整ってないし、ましてやデザインをするなんて概念もない・・。生きていく為に仕事をする事があっても、自分達の誇りを得る為に仕事をする意識を持つ事なんて、まだまだ先の事だろうと。しかし彼女はまっすぐな目で言いました。
カンボジア人がカンボジアの独自のブランドを立ち上げる。ここカンボジアから。
この意味、多くの方にはあまりピンと来ないかもしれません。しかしこれはとても凄い事だと思います。
代表のChanny。素敵な笑顔が印象的だ。
途上国におけるビジネスの構図は「先進国に守られる」構図が目につきます。事実、ここカンボジアでもイタリア人がデザインを行い、カンボジア人が作るという様なブランドもあります。要は先進国の人間が途上国へ介入するケースがほとんどで、先進国側の人間が出来る事と途上国側の人間が出来る事を棲み分けて展開する事例が多く見受けられます。
これによって何が起きるのか。
「自立」が一向に起きないのです。誰かが作り上げた「価値」に依存し、守られてしまう事で自分達で「価値」を作り上げる事を全くしなくなります。もちろん技術は大きな価値ですしいわゆる技術だけでも価値は成立します。
しかし特にアパレル業界では原則その技術を活かすも殺すも「トータルデザイン」、つまり【最終製品】が重要、というのが私の持論です。
つまりブランドを立ち上げるという事は「自立した最終製品」を生み出そうという事。それをこのカンボジアで、若き女性が立ち上がり挑戦している事を聞いている内に正直胸が詰まる程に大きな感動を覚えました。
「彼女達と一緒にカンボジアの製品を作りたい!」
率直にそう思いました。こうした熱を帯びた人との製作はいつも新たな可能性に繋がりますが、今回は本当単純に彼女達と一緒に作りたいと素直に感じました。
一連の話を伺ったところで、今度はこちらの番。手にした軍服の廃材を元に、こちらの思いを伝えたところ快く受け入れてくれました。そして早速デザインについて、彼女達と協議が始まったのです。
Vol3へ続く